突然絶滅したティラノ以前の恐竜、彼らは先代の王者、アクロカントサウルス
恐竜時代
恐竜時代は大きく三つに分かれていることはほかの記事でも何度か取り上げた。三畳紀、ジュラ紀、白亜紀の三つの年代である。だがそういった一つの時代にも前期、後期といったものが存在し、二分され、同じ年代でも何千万年もの時間のずれが存在する。
前期と後期では恐竜たちにも明確な違いがみられる。ティラノサウルスは白亜紀後期に出現した存在であり、恐竜の歴史的に見れば中生代の終盤に現れた存在で、本格的に時代を支配した点を見ればその歴史は浅い恐竜ともいえる。
ティラノは本当に恐竜時代の終わりに現れた王者だったのだ。今回はその王者たちからさかのぼること、数千万年、白亜紀前期に北米大陸のティラノサウルス以前の王者といわれた巨大肉食恐竜を紹介する。
アクロカントサウルス
恐竜の名前は「アクロカントサウルス」、名前の意味は「頂部に突起を持つトカゲ」である。
ティラノサウルスが出現する以前、白亜紀前期の北米大陸、その生態系の頂点に君臨していたとされる、全長12~13メートルとティラノと同等の巨体を持つ最大級の肉食恐竜である。1990年にほぼ完全な骨格が発見された。骨格を見ると背骨の上部分、神経棘という部分が少し伸びており、頭部の襟元から尻尾の先にまで及ぶ長い背びれが付いていたとされる。
だがこれは、スピノサウルスやディロフォサウルスの持つ帆に比べるとずいぶん小さく、この二種に比べるとたいして目立たない。白亜紀前期の当時の気候は地球全体で温暖化が進んでおり、体温調節の手段だったと考えられる。
実際彼らの生きた同年代にはスピノサウルスを含めた背中に帆を持った恐竜がほかにも多数存在した、だがずいぶんと帆が短いことを考えると、個人的には当時の環境での適応のため帆を持ったが、もともと乾燥や高温に強いのが恐竜なので、調節の必要はあったが受ける影響は少なく、それほど巨大な背びれが必要ではなかったということだろう。
アクロカントサウルスの生態
彼らはアロサウルス類の一種で、カルカロドントサウルスに近い種類とされる。足跡の化石を解析した結果、若い個体は最高40キロのスピードで走れたとされる、この巨体で考えるとかなりの俊足である。
彼らは当時の北米大陸の肉食恐竜のなかで最大級の巨体を誇り食物連鎖の頂点とされる。獲物も自身に見合った、巨大な竜脚類を獲物としていたとされる。発見地のテキサスの地層からはアクロカントサウルスが4頭以上の集団で行動し、20頭ほどのブラキオサウルス類の竜脚類の群れを追いかけていたという証拠とされる、足跡の化石が発見されている。
この中のアクロカントサウルスの足跡にはなぜか片足だけのものが含まれており、まるで片足ケンケンでもしていたような足跡で、これは獲物に噛みついて攻撃した際に獲物に引きずられた跡ではないかといわれている。またこの足跡化石は大型肉食恐竜が複数頭で獲物に挑みかかっていったという貴重な証拠でもある。
彼らアロサウルス類が最盛期を誇ったのは白亜紀前期までであり、それまではジュラ紀から長きにわたり、地球の各大陸の広範囲に生息していたのに白亜紀後期の序盤に差し掛かるころには突如として絶滅してしまった。
アクロカントサウルスほどの大型肉食竜が出現するほどの大繁栄を誇ったアロサウルス類が消えた明確な原因はいまだにわかっていないものの何らかの理由で彼らが絶滅してしまい、その地位を北米ではティラノサウルス類が埋め、南半球ではアベリサウルス類が繁栄することになった。実際として白亜紀後期の序盤の地層では彼らの化石がほぼ見つからなくなっている。
なぜ彼らが突然姿を消したか、それはいまだに誰にも分らない。しかし彼らの謎の解明に一筋の光を差し込ませる、とある肉食恐竜の存在が近年明らかになった。
その恐竜は、後の王者ティラノ類の最大のライバルだったとされる、その恐竜たちもアロサウルス類であり、肉食竜の歴史において非常に重要な存在であり、ある意味最も謎な存在が彼らなのだろう。