彼らから生物は陸に上がった、古代魚、ユーステノプテロン
太古の魚類の代表格
古代生物であり、人間がこの地球上に姿を見せる前から地球の王者であった恐竜にも、もちろん先祖たる動物はいた。古代の両生類の一部が爬虫類へと進化し、長い月日をかけ恐竜の先祖になる爬虫類が誕生することになるのである。
その爬虫類の先祖の両生類も古代の魚類がやがて陸上へ進出し、進化をすることになるのだが、そういった古代魚の中で、前に書いた現代に生きる古代魚の代表、「シーラカンス」に並ぶ知名度を持つ魚が、今回の記事の主役である。
その古代魚の名は「ユーステノプテロン」、別名「エウステノプテロン」名前の意味は「たくましい鰭」、どちらの名前も幅広く使用されている。
その名の通り彼らは体に強靭なヒレを7枚も持っていたのである。生息していた時代は恐竜時代よりもはるか昔の古生代デボン紀、現在から約3憶8500万年前という途方もない昔からである。現在の北アメリカからヨーロッパにあたる地域の川に主に生息していた。
体長は30㎝から120㎝程度、体の形状は頭が丸みを帯びた、どこか魚雷に似たような流線型の姿で、現在の魚とほぼ変わらない姿かたちをしていた。
強力な筋肉を持ったヒレ
彼らの最大の特徴はシーラカンスと同じく、内部に骨を持った「肉鰭(にくき)」という強靭なヒレを持っていたということである。この鰭の構造は四肢動物の骨格の構造とよく似ており、そのヒレはなんと7本指ともいえる骨がついていた。
このことから後に出現する陸上動物、原始両生類の祖先にあたる魚類なのではと考えられてきた。歯の構造も後の両生類の構造とよく似ていたためにその考えが加速することになったのである。歯だけでなくヒレの内部の骨や背骨の形状、頭蓋骨が最古の両生類に近いという特徴を持っており、彼らが祖先という認識も強くなっていった。
そういったイメージが漫画などの創作でも非常に強く反映され、ユーステノプテロンが図鑑などで登場すると、魚であるにもかかわらず水中ではなく、水中に倒れるなどした倒木の上に乗り上げて体を休めている描写などが多く描かれる傾向にある。
彼らがこう言った特殊なヒレを持つことになったのは生息域である河川の状態が大きな要因を占めていたとされる。彼らの住んでいた川の水中は大量の樹木から落ちてきた枝や、葉っぱなどが大量に沈んでおり、これらの障害物をかき分けて泳ぐためにこういった強力なヒレを持ったと考えられている。
陸上生物に似た呼吸機能
もう一つの特徴として彼らの生息水域は比較的海辺に近い、海水と淡水が混ざり合った汽水域だったと推測され、こういう場所は海が近いこともあり、潮の満ち引きが激しくそれによる影響も多々受けるはずであり、環境の変化たびたび起こり、水の流れが滞ったりなどして水中はよどみ、水中に酸素がなくなる酸欠状態にもなったとされる。
普通の魚類にみられるようなエラ呼吸では死にかねないほどの環境であるため、これらの対策として彼らは陸上生物の様に体に肺を持ち、それで呼吸するれっきとした肺呼吸を行っていた。
両生類の直接の祖先?
こういった理由で前述の通り両生類の祖先になったと近年までは考えられてきたが、最近では異説も持ち上がっている。それは後に現れる両生類が、ユーステノプテロンとシーラカンスが含まれる「総鰭類」よりも同じ古代魚の別種たるハイギョに近いとする意見である。
ハイギョ類の体の構造が両生類となんと20近くもの共通点を持っていたためであり、その後複数の肉鰭類の化石も発見され続けているので、どの種類が直接の祖先たる動物なのかは現在も論争の的になっている。
太古の生物たちの進化の大きな起点になったのかもしれない、ユーステノプテロン、彼らの存在が進化といったものをこれほどわかりやすく示してくれていることも興味深い。