恐竜は“大絶滅のあと”に生まれた|三畳紀に始まった地球の主役交代
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ティラノサウルスやトリケラトプス、巨大な竜脚類。
「恐竜時代」と聞くと、巨大な恐竜たちが地球を支配している光景を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、恐竜が初めて現れた三畳紀の世界は、私たちが想像する恐竜時代とはかなり違っていました。
最初の恐竜たちは比較的小さく、数も決して多くありません。周囲にはワニにつながる系統の主竜類や、哺乳類へと続く単弓類、巨大な両生類など、さまざまな動物が暮らしていました。
つまり三畳紀とは、単なる「恐竜時代の始まり」ではありません。
地球史上最大級の大量絶滅のあと、新しい生態系が作り直され、その中から恐竜が登場していった時代なのです。
三畳紀とはどんな時代だったのか
三畳紀は、約2億5190万年前から約2億140万年前まで続いた中生代最初の時代です。
三畳紀の前にはペルム紀、その後にはジュラ紀が続きます。
三畳紀という時代を理解するうえで欠かせないのが、その始まりと終わりの両方に大規模な生物の絶滅が関係していることです。
三畳紀は地球史上最大級のペルム紀末大量絶滅の直後に始まり、最後には再び三畳紀末大量絶滅が起きました。
そして、この二つの大事件の間で恐竜が誕生しました。
三畳紀は「史上最大の大量絶滅」から始まった
約2億5200万年前、ペルム紀の終わりに地球史上最大規模とされる大量絶滅が発生しました。
現在の研究では、海洋生物種の約81〜94%が失われたと推定されており、陸上生態系にも極めて大きな影響が及びました。
原因として重要視されているのが、現在のシベリアで起きた巨大火山活動「シベリア・トラップ」です。
大量の二酸化炭素などが大気へ放出されたことで急激な温暖化が進み、海洋酸性化や海洋の酸欠、酸性雨など複数の環境変化が連鎖したと考えられています。
三畳紀初期の地球は、そんな壊滅的な状況から回復しようとしている世界でした。
生態系が元に戻るまでには長い時間がかかった
大量絶滅が終われば、すぐに豊かな生態系が戻ってくるわけではありません。
ペルム紀末の大量絶滅後も高温などの厳しい環境が続き、複雑な生態系が本格的に回復するまでには数百万年以上を要したと考えられています。
その一方で、空いた生態的な場所へ新しい生物が進出する機会も生まれました。
陸上では主竜類が多様化し、海では魚竜や鰭竜類などの海生爬虫類が現れます。哺乳類につながるキノドン類も生き残り、三畳紀後期には哺乳形類が登場しました。
現在につながる多くの動物グループの基礎が作られていったことから、三畳紀は生物進化の大きな転換期でもあります。
世界は一つの超大陸「パンゲア」だった
三畳紀には、現在のアジア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ、南極、オーストラリアなどの陸地の多くがまとまり、パンゲアという巨大な超大陸を形成していました。
パンゲアは南北に非常に大きく、大陸中央部は海から遠いため乾燥しやすい地域が広がっていました。
ただし、三畳紀の地球全体が単純な「砂漠世界」だったわけではありません。
緯度や季節、海からの距離によって降水量は異なり、河川や森林が広がる地域も存在しました。恐竜が最初に登場した地域にも、季節によって環境が大きく変化する場所があったと考えられています。
恐竜はいつ誕生したのか
現在確認されている確実な恐竜化石は、およそ2億3000万年前の三畳紀後期までさかのぼります。
南米アルゼンチンのイスチグアラスト層などから、エオラプトルやヘレラサウルスといった非常に初期の恐竜が発見されています。
さらにアフリカから発見されたニャササウルスなど、約2億4000万年前まで恐竜の起源をさかのぼらせる可能性のある化石もありますが、それを真の恐竜とするかについては現在も議論があります。
そのため、現時点では「恐竜は少なくとも約2億3000万年前には確実に存在していた」と考えるのが適切です。
最初の恐竜は巨大ではなかった
初期の恐竜の多くは、ティラノサウルスや巨大竜脚類とはまったく異なる姿をしていました。
比較的小型で、細身の体と長い後脚を持ち、二足歩行する種類が多かったと考えられています。
初期の恐竜には肉食性や雑食性の種類が多く、その後、植物を中心に食べる系統も多様化していきました。
一方、三畳紀後期には竜脚形類の一部が大型化を始めます。
プラテオサウルスなどは数メートルを超える体へ進化しており、後のジュラ紀に登場する巨大な竜脚類へとつながる進化の道筋がすでに始まっていました。
プラテオサウルスについては「プラテオサウルス:三畳紀の巨大草食恐竜の祖先の謎を解き明かす」でも詳しく紹介しています。
恐竜は最初から地球の支配者ではなかった
ここが三畳紀を理解するうえで最も重要なポイントです。
恐竜は誕生した瞬間から陸上生態系を支配していたわけではありません。
約2億3000万年前の生態系を見ると、恐竜はむしろ少数派でした。
当時の陸上には、リンコサウルス類、キノドン類、大型両生類、そしてワニの系統につながる偽鰐類など、多くの動物が存在していました。
特に偽鰐類には大型捕食者や植物食動物など多様な種類がおり、恐竜と同じ主竜類の中でも非常に繁栄したグループでした。
恐竜はこうした生物たちと数千万年間にわたって共存していたのです。
詳しくは「三畳紀の恐竜とクルロタルシ類:恐竜が覇権を握った理由」でも紹介しています。
三畳紀後期に恐竜は少しずつ多様化した
恐竜は三畳紀後期になると徐々に多様化していきます。
肉食系統につながる獣脚類、後の巨大竜脚類につながる竜脚形類、そして鳥盤類につながる初期系統などが分岐していったと考えられています。
ただし、「三畳紀末には恐竜がすでに世界を完全に支配していた」と考えるのは正確ではありません。
2024年に発表された食物網の研究などからも、恐竜が幅広い生態的役割を占める現在イメージされるような「恐竜中心の生態系」が成立するのは、主にジュラ紀初期だったことが示されています。
つまり恐竜の台頭は、一度の急激な出来事ではなく、数千万年かけて進んだ変化だったのです。
三畳紀の海にも大きな変化が起きていた
恐竜が進化していたころ、海でも新たな生態系が形成されていました。
三畳紀には魚竜が急速に多様化し、鰭竜類などさまざまな海生爬虫類が登場しました。
また、現代の海で重要な造礁生物となっている六放サンゴ類も三畳紀に広がっていきます。
なお、硬骨魚類そのものは三畳紀に初めて誕生したわけではなく、すでに古生代から存在していました。三畳紀には、その一部の系統が大量絶滅後の海洋生態系の中で多様化していきました。
そして再び大量絶滅が起きた
約2億140万年前、三畳紀の終わりに再び地球規模の大量絶滅が発生します。
三畳紀末大量絶滅です。
現在、その有力な原因と考えられているのが「中央大西洋マグマ区(CAMP)」と呼ばれる巨大火山活動です。
当時パンゲアが分裂し始めていた地域で大規模な火山活動が発生し、大量の二酸化炭素などが放出されました。その結果、急激な温暖化や海洋酸性化など地球環境に大きな変化が起きたと考えられています。
海では多くの生物が姿を消し、陸上でも偽鰐類を含むさまざまな系統が大きな打撃を受けました。
大量絶滅を生き残った恐竜がジュラ紀へ
ところが恐竜の主要な系統は、この大量絶滅を生き残りました。
競争相手だった多くの大型陸上動物が減少したあと、空いた生態的な場所へ恐竜たちが進出していきます。
そしてジュラ紀に入ると、大型竜脚類や大型獣脚類などが各地に広がり、ようやく私たちが思い浮かべる「恐竜が主役の世界」が成立していきました。
恐竜の進化全体については「恐竜の進化とその過程|誕生から絶滅、そして現代へ」でも詳しく解説しています。
まとめ|三畳紀は「恐竜支配の時代」ではなく「恐竜が生まれた時代」
三畳紀は恐竜時代の始まりですが、最初から巨大な恐竜が世界を支配していたわけではありません。
約2億5200万年前のペルム紀末大量絶滅によって古い生態系が崩壊し、その後数千万年をかけて新しい生物たちが空いた生態的地位へ進出していきました。
その一つが恐竜でした。
約2億3000万年前には確実な恐竜が現れましたが、彼らは当初、多数存在した陸上動物の一グループにすぎませんでした。
そして約2億140万年前の三畳紀末大量絶滅を乗り越えた後、ジュラ紀に入って急速に生態系の主要な地位を占めていきます。
恐竜時代は、恐竜が誕生した瞬間に始まったのではありません。
二度の巨大な環境危機と、生物たちの長い生存競争を経て、地球の主役が少しずつ入れ替わっていった結果として生まれたのです。
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