巨大昆虫をはぐくんだ酸素地獄!、黒いダイヤができた時代、石炭紀!
日本では一昔前まで、石油ではなく石炭で発電をしていた時代があった。東京の足立区に過去、存在した、通称お化け煙突があった工場、千住火力発電所も石炭で発電する発電所だった。どこぞのフラダンスで、炭鉱が閉鎖されたことで、廃れだしてしまった村を救おうとする映画もあった。作中では石炭は「黒いダイヤ」とも呼称された。そんな石炭が多く見つかる地層の時代、その時代が今回の記事の主題である。
石炭紀
その時代の名はズバリ「石炭紀」、恐竜誕生以前、いやその恐竜の祖先にあたる動物すら出現していない、現在から約3億5920年前から2憶9900万年前にあたる時代である。古生代の年代区分の中で、唯一漢字があてがわれている時代で、その由来はこの時代の地層から多量の石炭が発見されたためである。
だがアメリカでは前期をミシシッピ期、後期をペンシルバニア期とも呼称されている。ちなみに石炭は植物がもとでできるので、この時代には大規模な森林地帯が存在したという、明確な証拠品としてもと扱われている。当時はまだ分解の役割を持つ微生物も出現していなかったか、少なく、木々が分解されずに積み重なっていったため石炭ができた。
この時代は湿潤で温暖な気候であり、陸上植物の本格的進化が始まった時期で、地球で初めて植物たちが、天下を取ったといっても過言ではない時代であった。どういうことかというと、この時代は全長20~30メートルに達する「リンボク」というシダ類に属する巨木たちが出現し、湿地帯に大森林が築かれた時代だったからである。
実際この時代の地層からは石炭のみならず、植物系の胞子や樹木の表皮や枝、シダ類の葉の化石が多数発見されている。最大の特徴は酸素が濃かった点である。我々人間は酸素がなければ生きていけない、世間では酸素カプセルなどの健康法もあるが、高濃度の酸素も人間にとっては毒でもあり、あまり濃い酸素を吸うと、体内組織が破壊されてしまうのである、また金属と結びつくと錆びさせたりする、一種の毒であり、極端な話我々は、常日頃から、毒ガスの中で生活しているということだろう。
石炭紀は巨木たちが出現しどんどん二酸化炭素を吸い続け、酸素を大量に放出していた。酸素濃度は現在の地球が、21%に比べ、石炭紀は35%と高く、人間など生きていけないほどの酸素地獄だったのである。
あまりにも濃度が高いため、石炭紀の風景はなんと昼間でもセピア色だったとされる。その気候上、荒天により雷が森に落ちようものなら、大量の酸素で即座に火が広がり大火災が発生してしまう危険な一面もあった。
また二酸化炭素がないということは温暖化とは真逆の寒冷化を引き起こすことになる。温める機能を持つ二酸化炭素が少ないなら地球は冷え続けるのは道理で、地球全体が安定し穏やかだった一方で、当時巨大なゴンドワナ大陸の南部に南極があり、そこで氷河が広がりだし、時代の終盤に氷河期を迎える原因になってしまったのである。
石炭紀の生物
この時代の生物は主に両生類と巨大な節足動物たち、昆虫である。石炭紀の昆虫たちは高濃度の酸素のおかげで代謝促進により巨大化できたのである。この時代の様はまさに昆虫天国といっていいほど昆虫たちが繁栄を謳歌した時代でもあった。
主な昆虫は体長60センチに及ぶ史上最大の飛行昆虫とされる、古代の巨大トンボ「メガネウラ」、どこぞの映画では怪獣の元ネタになった生物である。現在のヤスデやムカデに近縁の、というかもはや巨大ムカデといっていい、体長3メートルになる「アースロプレウラ」、体長60センチのウミサソリ「メガラシネ」そして陸に進出し始めたばかりの両生類たちにとって、この巨大昆虫たちは貴重な栄養源になったと推測される。
後のペルム紀で大繁栄する単弓類もこの時代に出現した、しかし大方は昆虫たちに食べられてしまう機会のほうが多かったらしい。しかしそんな昆虫たちも時間が流れ、大陸同士が結合したことで超大陸パンゲアが形成され、森林地帯の環境も変化したことで終わりを迎えることになる。
昆虫たちの住みかの森林は雨が多くなり、木々に菌類が現れ、気を腐食させ分解するようになっていった。木が減れば当然酸素放出量は減る、そこから酸素濃度は下がり続け、末期には23%と現代と大差ないほどにまでなった。地球の酸素濃度低下とともに絶滅か、小型化するかして、やがて表舞台から姿を消した。
植物と昆虫は地球のあらゆる生物の中で最も深い関連性を持っている。そんな彼らが繁栄、絶滅、小型化したのも、すべて植物に由来するならこれもまた皮肉な話である。