三畳紀の恐竜の代表格!強かなるハンター、コエロフィシス
まだ恐竜は主役にあらず
恐竜たちの時代はほかの記事だと、ジュラ紀、白亜紀の実質2つの時代しかなったと言及したが、恐竜たちがこの地球上に出現し始めた最初の時代たる三畳紀にも少なからず恐竜たちは存在していた。だが前述の2つの時代に比べれば特徴的な恐竜たちはまだおらず、いたとしても姿が同じようで言っては悪いが代わり映えしないものが多かった。
そんなまだまだ主役の座からは遠かった時代でも代表的な恐竜は存在した。今回は最初の三畳紀の代表的恐竜が主役である。
初期の恐竜、特異な発見の経緯
今回の主役の名は「コエロフィシス」、名前の意味は「中空な形」、約2憶1000万年程前の三畳紀後期の北アメリカに生息していた、同時代の初期の恐竜の代表格である。発見されたのは1881年とこれまた古い時代であり、その時発見された断片的な骨は中身が空洞でそれが名前の由来になった。
1889年になると正式に恐竜の新種として認定された。発見された化石が部分的なものだったので情報が少なく、この恐竜の研究が進歩するのは60年たってからの話である。1947年にニューメキシコ州のゴーストランチという土地でなんと100体にも及ぶコエロフィシスの化石が発見されたのである。
こういった大量の化石がまとまっている場所を通称「ボーンベッド」と呼称される。発見された化石は量、質ともに優れており、情報量も多く研究が飛躍的に進むことになった。他の場所ではアリゾナ州のペインテッド砂漠で化石が見つかっており、ここからは大きさ30mにも及ぶ巨大樹の化石が発見されており、巨大な樹木も少なからず存在していたということ。
そしてのちにジュラ紀になりこういった樹木が酸素不足を解決するのである。ちなみに彼らの卵の化石は保存されにくいらしく、まともなコエロフィシスの卵化石は見つかっていない。ちなみにカーネギー自然史博物館にある頭骨の化石だが、なんと1998年にスペースシャトル「エンデバー」に乗って宇宙へ行っているのである。
スマートかつ軽快な捕食者
研究の結果、彼らの体長は約3m、体重は30kgにもならない、小型の恐竜だとされる。体重の軽さは骨の空洞からなり、この特徴は後の時代の竜脚類にもみられる。この時代の恐竜らしく、あまり見栄えのしないスリムな見た目をしていた。二足歩行性の恐竜としては珍しく、首と尻尾が長く、体の大半を占めていた。
脚も比較的長く歩幅は75㎝にも及び、軽量な体と合わせて考えると、かなり素早い恐竜だったとされ、歯の構造も鋸歯が付いた鋭い構造で、当時生態系の上位者であったワニを含め、多数の小型生物を食料にしていたとされる。
頭骨も面長で穴が多数空いて軽量化されており、これは後の時代に現れる恐竜のすべてに共通した特徴であった。指は4本指で、後に現れる恐竜たちが3本指などが多く、コエロフィシス以前の恐竜が5本指だったことを考えると、この時点で恐竜の指の退化が始まっていたとも考えられる。
大腿骨(太ももの骨)の付け根の後ろ側には筋肉が付くための大きな溝があり、これは彼らより古い種にあたるヘレラサウルスより進化した構造である。発見された大量の化石には幼体などの年齢差が開いた個体の化石も見られ、このことから群れで生活、行動し、子育てを行っていた可能性も高い。
一時期は彼らの胃袋にあたる部分から、彼らの幼体と思しき化石が発見され共食いも指摘されたが、後にこの化石は小型のワニ類の化石だと判明し共食いの可能性はまた曖昧になった(生物界において共食いは珍しい行為ではなく、同種同士の共食いも多くみられる)
有名かつ強かなハンター
彼らはまだ初期段階の恐竜であり優れた利点を持ってはいても、まだまだ非力であった。彼らの天敵の代表格はその時から強者に位置していた当時の支配者にして多様な種類が存在した古代ワニ類、またはそのほかの古代の爬虫類たちであり、そういった古代の強者たちと熾烈な戦いを繰り広げたと推測される。また複数の亜種もいたとされ、細身なもの、体格のいいものがいた。
コエロフィシスは三畳紀の代表的恐竜であるゆえか、図鑑には必ず登場するほど知名度が高い。最初期の恐竜として1900年代以前から発見されていたという部分も大きな要因なのだろう。
恐竜たちがまだ苦難にさらされていた時代をしたたかに生き延びたコエロフィシス。彼らの生存が今後の恐竜の繁栄に大きな役割を果たしていたことは確実である。