ディロフォサウルス:エリマキ恐竜の誇張されたイメージと実像
映画と現実のギャップ
映画「ジュラシックパーク」では、1990年代初頭ということもあり、恐竜の描写には現在では否定されている学説を踏まえたシーンも多かった。その中でも特に大きく描写が変更されていたのが「ディロフォサウルス」という恐竜です。
誇張された恐竜ディロフォサウルス
ディロフォサウルスは、恐竜が出現し始めた三畳紀の終わりごろに出現し、当時の肉食恐竜としては5メートルから7メートルとかなり大きな体格をしていました。しかし、骨格そのものはスマートで、体の大半は尻尾が占めていました。
名前の意味は「ふたつのトサカをもつトカゲ」で、その名の通り、頭の上には1対の骨の板が付いており、これが名の由来です。しかし、非常に薄くもろい作りであり、戦闘には使わず、もっぱら異性へのアピールや威嚇用のディスプレーとして使われていたと考えられています。
ディロフォサウルスの特徴
頭骨と顎の構造
ディロフォサウルスの頭骨には、上あごの前部に「くびれ」が見られ、歯列も前方と後方で分かれていました。この特徴はスピノサウルスやバリオニクスといった魚食性恐竜に似ており、彼らも魚を主食にしていたと考えられています。しかし、明確に魚を食べていた証拠は見つかっていないため、これはあくまで推測の域を出ません。
顎の力も強いとは言えず、体格も華奢であったことから、主にトカゲなどの小型爬虫類や昆虫類を食料としていたと考えられています。また、時折死体にも手を付けたりといったハイエナのような行動もとったとされています。
映画での誇張
映画「ジュラシックパーク」では、ディロフォサウルスは毒液を吐いて獲物を捕食するという奇抜な恐竜として描かれ、さらにエリマキトカゲのようなエリマキが付いており、敵に威嚇する際にこれを広げるという演出がありました。このような描写は、当時の研究で魚食性という説がまだ確立しておらず、華奢な恐竜がどのように獲物を仕留めていたかを推測する中で生まれたものです。
珍しい化石の発見
2017年の発見
2017年には、非常に珍しいディロフォサウルスの化石が発見されました。この個体はなんと両腕を中心に体の8か所も骨折していたのです。恐竜で見つかっているケガの記録としては新記録であり、左半身の肩甲骨骨折、腕の尺骨と手の骨折、右半身の上腕骨の異常なねじれや前腕の腫瘍の跡、手の指の奇形など、類を見ないほどの重傷を負っていたことが明らかになりました。
自然治癒の証拠
しかし、驚くべきことに、この個体の骨折はほとんど治癒していたのです。これだけの重傷を負いながらも、骨が再生するまで生き延びたという事実は、野生生物の驚異的な生命力を示しています。獲物は小動物を中心に変更し、長い時間をかけてどうにか生き延びたと考えられます。
ディロフォサウルスの真の姿
本来の生態
ディロフォサウルスは、実際にはあまり力強い捕食者ではなく、その生態は映画で描かれたような劇的なものではありませんでした。しかし、その体の構造や生活様式は、他の初期の恐竜たちの進化を理解する上で重要な手がかりとなっています。
研究の重要性
ディロフォサウルスの研究は、恐竜の進化と適応を理解するために重要です。彼らの骨格や生活様式の詳細を知ることで、三畳紀の生態系や恐竜の進化の初期段階をより深く理解することができます。
まとめ
映画「ジュラシックパーク」によって誇張されたディロフォサウルスのイメージと実際の姿は大きく異なります。しかし、彼らの研究は恐竜の進化や生態系の理解において非常に重要な役割を果たしています。ディロフォサウルスは、三畳紀の地球に生息していた初期の恐竜の一つとして、今後も多くの研究者の興味を引き続けることでしょう。