ガリミムスの速度に迫る:恐竜の快速ランナー
恐竜の存在感はひ弱さとははっきり言って無縁である。
パワー型の恐竜や体格自体も巨大すぎるくらいで、地球の時代でも中生代のスケールは最大であったといっていい。その中にもパワーの反対、スピードに重点を置いた種も非常に多かった。
今回は恐竜界で最も足の速かったといわれる恐竜を書いていく。
最大のダチョウ恐竜
今回の主役の名は「ガリミムス」、名前の意味は「ニワトリもどき」。
約7000万年前の白亜紀後期のモンゴルのゴビ砂漠付近に生息していた、「最も足の速い恐竜」として知られる、オルニトミムス類の一種である。体長は4~6メートル、体重は400㎏~440㎏。
このグループでは最近話題になった巨大恐竜「デイノケイルス」を除けば、最大の種となる。1970年代の初期に化石が発見され、数年後に記載され世間にその存在が知られるようになった。
この時発見された化石は40体~87体以上にもなる大量なもので、その中の3体は完全なもので保存状態もよく、詳細な情報を詳しく調べることができた。
肉体のフォルム、足を見ても非常にスマートで走ることに特化した恐竜であり、生息地域のゴビ砂漠では肉食恐竜から走って逃げるのが得意だったとされる。「ダチョウ恐竜」の名を持つ「オルニトミムス」に近縁で、体が大きいが特徴も非常によく似ていた。
最速の恐竜
オルニトミムスはスピードに秀でていると知られているが、ガリミムスも同じかそれ以上のスピードで走ることができる、足の速い恐竜だった可能性が高い。
骨格のつくりは現代のダチョウに似ており、その走行速度はチータ並みに達したという。単純に考えて70㎞~100㎞ということになり、このことから最速の恐竜の一つと考えられている。足の骨の構造がこの種の祖先と比べると変化しており、足の甲を作る骨3本の太さがそれぞれ違っていた。
この構造は足の柔軟性を増し、走る際の衝撃を和らげる作用と機能があったという。腿の骨に比べ脛の骨が長いことも、足の速い生物にみられる特徴であり、随所に足の速さが見て取れる。
足首の関節も高い位置にあり、短距離疾走に適した足をしていた。細身で天敵に対する武器と呼べるものはなかったが、足以外にも対抗手段は持っていた。
小さな頭に着いた眼球は頭の側面についており、非常に広い視野を誇っていた、これは現代のウマ類にもみられ、正面の視野はないに等しかったが、首を回して広範囲を見渡し敵の発見に役立てていた。
頭骨から脳が大きかったことも分かり、恐竜の中でも知能が高かったとされている。
発見された複数の化石から群れをつくっていた可能性も高く、群れで敵の襲撃を防いでいた可能性も高い。長く細い尾はバランサーとして機能し、体全体のバランスを取り、骨は空洞上になり軽量化していた。
砂漠での適応
獣脚類だが口には歯が付いておらず、くちばしのような構造になっていた。捕食者としての機能はほぼ持ち合わせておらず、植物食中心の雑食性の恐竜だったと思われる。捕食するにしてもトカゲや昆虫の小動物が中心で、時には他の恐竜の卵も食べていたという。
2001年には彼らの口には、櫛上のフィルターに様な器官があることが分かり、これを使い水辺などに生息・自生している藻やコケ、水中の小動物をこしとって食べるデトリタス食も行っていた可能性が浮上した。
腕は体に比べ短いうえに、可動域も狭く柔軟に動かせるものではなかったという。小さな爪は武器になるとは思えず、物をつかむ動作もできなかったという、だが地面を掘る際に腕を使った可能性は考えられている。
オルニトミムス類は羽毛の痕跡がある化石も見つかっており、ガリミムスも羽毛を持っていた可能性が極めて高いという。