アカントステガ!最初期の両生類、8本指に進化した手足
巷は騒がしいが、恐竜の新発見の報告は後を絶たず、話題になり続けている。とあるゲームで話題になっている「古代の両生類」を取り上げるので、お楽しみください。
最古クラスの両生類
今回の主役は「アカントステガ」。名前の意味は「棘の鎧」。正式名称は「アカントステガ・グンナリ」。名前の由来は、頭蓋骨後板部の板状骨による。
約4憶1660万年~3億6500万年前のデボン紀後期のグリーンランドに生息し、そこからしか化石が発見されていない「最初期の両生類」である。
体長は約60㎝、体重は不明だが小柄な生物だったのは間違いない。1933年にスウェーデンの学者二人によって、最初は頭骨の一部の化石のみ見つかった。1970年代に山の斜面からほぼ完ぺきな頭骨が3個見つかり、これをきっかけとし、その後、1987年に探検隊が良好な保存状態の化石、頭骨、肢骨、背骨、尾椎がグリーンランド北東部にて発見され、これによって一気に研究が進んだ。
デボン紀は魚類が「足」獲得し、陸上へ進出し始めた時代として有名で、本種はその中でも特に原始的な特徴を併せ持つという。
8本指の両生類
アカントステガの最大の特徴は「8本の指を持つ手足」だった。この指によって、手の起源とその進化の定説が再検討されるようになったという。肩帯にエラの痕跡があり、現代の両生類の様に肺呼吸とエラ呼吸の両方の呼吸を行っていたとされる。近衛らは魚の様に隠れたものだった。
全身の骨格を調べてみると、陸上の生物よりも魚類に近い構造をしていて、やはり水辺付近を主な生息域にしていたようである。アカントステガの腕は、ひどく曲がり、橈骨の長さは尺骨の2倍もあった、とても陸を歩けるような構造ではなかったといわれる。
手足の指は多かったが、骨格自体はシーラカンスなどの丈夫なヒレを持つ古代魚の「肉鰭類」とおなじ特徴を持ち、歩くよりも泳ぐことに向いていた。手足の骨には「手首」の関節がなく、見た目だけで可動域はほとんどなく、とても体重がかかる陸上を歩けるような構造ではなかったという。
化石を見ても肋骨もほとんど発達しておらず、手足の骨は薄くかなり骨格は脆弱だったようである。このことから、一生のほとんどを水中で生活し、手足は水中の障害物を避けて移動するためのものだったと推測される。
尾びれも魚類の物と似ており、皮骨製で強靭で泳ぐのに向いていて、背骨まで陸地での重力に耐えうる強靭なものではなかったという。単純に手と指は、水中をより移動できるために変えただけであったようである。
完全な水中動物
魚類は陸を歩くのではなく、水中でより移動しやすいような形態に進化していき、「手」を持ったとされる。アカントステガも頭が出るか出ないかぐらいの、かなり浅瀬に生息しており、そういったところに多く生える水草を手を使ってかき分けていたのかもしれない。そこから上陸に転ずることになったとも考えられている。頭骨の分析によると、水際で獲物を捕食していた可能性が高く、地上での捕食に適応した構造であったという。
頭部には測線器官があり、水圧を感知でき、頭蓋はスキマがなく鼻先は頑丈な構造だった。歯は大きなものが外側、小さなものが内側にあり、これは水棲動物が陸の獲物を捕食するように移り変わっていったことを示しているのではとされている。
水の外で捕食をしていた最初の水生動物であるという仮説を補強する結果であるとしている。水底や丸太や岩にしがみついて魚を捕食していたりもしたとのこと。
どうやら水中でより活動できるように進化し、手と指を持つようになっただけで、陸への適応が見た目だけ見られる、完全な水中生物だったことは確実であるようだ。
恐竜の羽毛もそうだが、最初は別の用途で獲得しながらも、後に別の使い方を知った結果、進化の手助けになったという線は否定できず、我々「人間の手」も本来はちがう使われ方から派生していったということであろう。