コレケン・イナカヤリ :ほぼ腕のない新種肉食恐竜
発見の経緯
すべてはかぎ爪から始まりました。アルゼンチンのラ・コロニア累層で恐竜の化石を探していた古生物学者たちが、岩石から突き出た足の指の骨に気付きました。さらに掘り出して調べてみると、鼻の低い肉食恐竜アベリサウルス類の新種と判明しました。白亜紀が終わる数百万年前、太古のパタゴニアを歩いていた肉食恐竜です。この発見は2024年5月21日付で学術誌「Cladistics」に発表されました。
命名と意義
アルゼンチンにあるエジディオ・フェルグリオ古生物博物館の古生物学者ディエゴ・ポル氏らは、この恐竜を「コレケン・イナカヤリ」(koleken inakayali)と命名しました。パタゴニア東部の先住民族テウェルチェの首長だったイナカヤルにちなむ名前で、テウェルチェ語で「粘土と水から生まれる」という意味です。ポル氏のチームは、6600万年前に地球の生物多様性を一変させた大量絶滅よりも前の恐竜の進化を理解しようと取り組んでおり、コレケンの発見はその一環です。
発掘と特徴
コレケン・イナカヤリの化石は、部分的な骨格として発見されました。発見された化石には、頭骨の一部、ほぼ完全な背骨、完全な腰骨、いくつかの尾骨、ほぼ完全な脚が含まれています。ラ・コロニア累層は約500万年かけて形成されたため、コレケンと同じ時代を生きた可能性もあります。ポル氏らは現場に戻り、さらなる発見を期待して調査を続けました。
新種の判定
コレケン・イナカヤリが新種の恐竜であることはすぐにはわかりませんでした。1985年、同じ地層でカルノタウルスという有名な肉食恐竜が発見されていたからです。しかし、ポル氏らが発見した骨にはカルノタウルスの特徴である角がなく、異なる種であることが示唆されました。論文は、コレケンが新種であるとする主張を裏付けています。
生態と進化
コレケン・イナカヤリの発見は、白亜紀後期におけるアベリサウルス類の進化について新たな視点を提供します。アベリサウルス類は大型の草食恐竜と共存し、白亜紀後期に南半球で広く分布していました。ティラノサウルスに比べてずんぐりとした体型で、短い前肢を持っていたことが特徴です。
研究の意義
コレケン・イナカヤリの発見は、アベリサウルス類の進化と生態について新たな洞察をもたらしました。ジュラ紀に共通祖先から分かれた2つの系統がどのように進化し、対照的な形態を持つに至ったかを理解するための重要な発見です。ポル氏らは、さらにこの時期の獣脚類の化石を探し続ける必要があると強調しています。
結論
コレケン・イナカヤリの発見は、白亜紀後期のパタゴニアにおける恐竜の多様性と進化を理解する上で重要な一歩です。この発見は、恐竜の進化について新たな視点を提供し、今後の研究に大きな影響を与えるでしょう。