イー・チー: ジュラ紀の奇妙な翼を持つ羽毛恐竜の詳細解説

**イー・チー（Yi qi）**は、中国のジュラ紀中期に生息していた獣脚類恐竜で、他の恐竜とは異なる飛行メカニズムを持っていたことで注目を集めています。約1億6000万年前の遼寧省の地層から発見されたイー・チーは、全長約40〜60センチメートル、体重は約380グラムと推定される小型の恐竜です。

特徴と構造

　イー・チーの最大の特徴は、その独特な翼の構造にあります。他の多くの羽毛恐竜と異なり、イー・チーの翼は鳥のような羽毛ではなく、コウモリや翼竜に似た皮膜状の翼を持っていました。特に、第三指が非常に長く伸びており、これが皮膜の支持骨として機能していたと考えられています。この構造は、現生のコウモリやムササビと似ていますが、イー・チーの場合、羽ばたき飛行ではなく、滑空に特化していた可能性が高いとされています。

イー・チーの化石からは、濃い羽毛に覆われた様子が確認されており、体全体が羽毛で覆われていましたが、飛行に用いられたのは皮膜の翼でした。この翼の構造と全体の体形から、樹上で生活し、滑空して移動していたと考えられます。

発見と意義

　イー・チーの化石は2007年に発見され、2015年に正式に記載されました。この恐竜の発見は、恐竜の進化における多様性と飛行能力の進化に関する新たな知見を提供しました。特に、従来の恐竜研究では羽毛による飛行能力が注目されてきましたが、イー・チーの存在は、恐竜が異なる飛行メカニズムを進化させていた可能性を示しています。

イー・チーはスカンソリオプテリクス科に属し、エピデンドロサウルスやエピデクシプテリクスなどと近縁ですが、その中でも特異な存在です。イー・チーの発見は、恐竜が進化の過程で様々な飛行形態を試みていたことを示唆しており、飛行の進化における多様性を理解する上で重要な手がかりとなります。

結論

　イー・チーは、恐竜の進化における「実験的な」飛行メカニズムの一例であり、その独特な翼構造は、進化の過程で恐竜が多様な環境に適応していったことを物語っています。滑空飛行をするために進化したこの小型恐竜は、鳥類の祖先とされる獣脚類恐竜の中でも非常に興味深い存在であり、恐竜研究における新たな視点を提供します。