白亜紀の謎の巨大肉食恐竜シアッツ|発見が書き換えたティラノ以前の北米
北米の白亜紀と聞くと、多くの人はティラノサウルスを思い浮かべます。しかし、白亜紀のすべての時代でティラノサウルスが頂点に立っていたわけではありません。
2013年に発表されたシアッツ(Siats meekerorum)の発見は、その常識を大きく揺るがしました。シアッツは、ティラノサウルスが登場するよりもはるか以前に、北米で最大級の捕食者として存在していた恐竜です。
シアッツとは何者だったのか
シアッツは白亜紀中期(約9800万年前)に生息していた大型肉食恐竜で、化石はアメリカ・ユタ州の地層から発見されました。全長は10メートル前後と推定され、当時の北米では最上位クラスの捕食者だったと考えられています。
分類上、シアッツはカルカロドントサウルス類に近い系統とされ、ティラノサウルスとは系統的に大きく異なります。つまり、北米では一時期、ティラノ系ではない巨大肉食恐竜が生態系の頂点に立っていたのです。
「ティラノ以前の空白」を埋めた発見
シアッツが発見される以前、白亜紀中期の北米は大型肉食恐竜の化石記録が乏しく、「捕食者の空白期」と考えられていました。
しかしシアッツの存在は、この空白が単なる化石不足ではなく、実際に別系統の巨大捕食者が君臨していた時代だったことを示しています。ティラノサウルスは、最初から王だったわけではありませんでした。
なぜティラノサウルスではなかったのか
白亜紀中期の北米では、環境や草食恐竜の構成が後期とは異なっていました。この時代には、巨大な竜脚類や多様な草食恐竜が存在し、シアッツのような大型で俊敏な捕食者が有利だった可能性があります。
一方、ティラノサウルス類はこの時代にはまだ小型〜中型にとどまっており、頂点捕食者になる準備段階にありました。シアッツは、ティラノが台頭する前に完成していた“別の解答”だったのです。
捕食者交代が起きた理由
白亜紀後期に入ると、北米の生態系は大きく変化します。草食恐竜の顔ぶれが変わり、環境の不安定さも増していきました。
この変化の中で、生き残ったのがティラノサウルス類でした。強力な噛む力と単独狩りに適した体制は、変動の激しい環境に適応しやすかったと考えられます。
一方で、シアッツの系統は次第に姿を消し、捕食者の主役は入れ替わっていきました。
なぜシアッツの発見は重要なのか
シアッツは新種の恐竜が見つかったというだけでなく、恐竜進化の「連続性」を示した点で重要です。
恐竜の歴史は、ティラノサウルスのようなスター恐竜を中心に語られがちですが、実際には主役が何度も入れ替わるダイナミックな過程でした。シアッツは、その交代劇の決定的な一場面を担っていた存在なのです。
まとめ|シアッツは王座交代前夜の証人
シアッツは、白亜紀中期の北米において、ティラノサウルス以前の頂点捕食者として存在していました。その発見は、恐竜進化が直線的ではなかったことを明確に示しています。
ティラノサウルスが王になる前には、別の王がいた。シアッツは、その事実を私たちに突きつけた重要な恐竜なのです。