ズンガリプテルス: ジュンガル盆地から発見された謎の翼竜
ズンガリプテルスとは?
ズンガリプテルス (Dsungaripterus) は、前期白亜紀に生息していた翼指竜亜目の翼竜で、中国で初めて発見された翼竜として知られています。学名は発見地であるジュンガル盆地に由来し、「ジュンガルの翼」という意味を持ちます。
発見と分布
ズンガリプテルスの模式種である Dsungaripterus weii は、中国の新疆ウイグル自治区で発見され、1964年に中国の古脊椎動物学者楊鍾健 (Yang Zhongjian) によって記載されました。その後、内モンゴルや韓国など東アジア地域の前期白亜紀の地層からもズンガリプテルスの化石が発見されています。
特徴
体型と構造
ズンガリプテルスの翼開長はおよそ3 – 3.5メートル、頭骨長は約50センチメートルであり、その時代としては比較的大型の翼竜です。頭骨は幅が狭く、丈が高く、鼻孔と前眼窩窓が一体化した大きな鼻前眼窓を持ちます。眼窩はその後方に位置し、後頭部には小さな骨質の突起が見られます。また、前頭部から吻部中程にかけて薄くて低い骨質稜が存在します。
上下顎
ズンガリプテルスの最大の特徴は、その上下顎です。口吻先端には歯が全くなく、ピンセットのような上下顎先端が上方に向かって反り返っています。口裂後半部には上下顎ともに鈍頭の疣状構造が並んでおり、これが真性の歯か顎骨の突起かについては研究者の間で意見が分かれています。
骨の構造
ズンガリプテルスの骨は他の翼竜と同様に中空で軽量ですが、脛骨などは比較的骨壁が厚いのが特徴です。
生態
ズンガリプテルスは水辺の地表で渉禽類のように貝類や甲殻類を探して食べていたと考えられています。ピンセットのような口先で岩の隙間や砂の中から餌を拾い上げ、その鈍頭の歯状の構造で固い殻を噛み砕いていました。
分類
ズンガリプテルスはノリプテルスなどの近縁種と共に、楊鍾健が提唱したズンガリプテルス科に含まれます。楊はまた、「嘴口竜亜目」「翼指竜亜目」に続く第3の亜目「ズンガリプテルス亜目」を提唱しましたが、現在ではこの見解は受け入れられていません。ただし、上科としての「Dsungaripteroidea」を採る分類体系は近年よく見られます。
種と分類
- Dsungaripterus weii: 1964年に楊鍾健によって記載された模式種。新疆ウイグル自治区で発見され、完全な頭骨や胸骨、骨盤などが含まれる化石が見つかっています。
- Dsungaripterus brancai: 元々は1931年にタンザニアのテンダグルから発見され、プテロダクティルスの一種として記載されていましたが、現在ではズンガリプテルス属に属するとされています。
- Dsungaripterus parvus: 1982年にモンゴルから発見され、小型の標本に命名されましたが、後にノリプテルス属に移され、現在では Noripterus parvus とされています。
まとめ
ズンガリプテルスは、その独特な顎と骨構造で知られる前期白亜紀の翼竜であり、中国で初めて発見された翼竜です。彼らは主に水辺で生活し、貝類や甲殻類を主食としていました。その化石の発見と研究は、当時の生態系や翼竜の進化についての理解を深める重要な手がかりとなっています。