ティラノサウルスの“最高速度”は本当はいくつ?|最新研究が覆した意外な真実
ティラノサウルスといえば──映画では猛スピードで走り、
ジープを追いかけ、獲物を一瞬で仕留める“疾走する怪物”というイメージが強いですよね。
しかし、最新研究ではそのイメージが大きく揺らいでいます。
「ティラノサウルスは実際にはどれくらいのスピードで走れたのか?」
この問いに対し、最新の科学は驚くべき答えを出し始めています。
今回は、研究の変遷をたどりながら、
ティラノサウルスの最高速度の“意外な真実”に迫ります。
昔は“時速70km”と言われていた?
1990年代〜2000年代初期の恐竜番組や書籍では、
ティラノサウルスの最高速度は時速50〜70kmという説が広く知られていました。
しかし、これは主に「現代の大型動物の走行速度」からの推測で、
骨格や筋肉構造のデータはほとんど反映されていませんでした。
また、映画の演出がそのまま“科学的事実”として広まったことも大きな理由です。
最新研究が示した「走行速度の限界」
ティラノサウルスの速度研究は、この10〜15年で大きく進歩しました。
3D骨格モデル、筋肉の復元、ロボティクス、生体力学などの技術が進み、
実際の足の負荷や体重がより正確にわかるようになったからです。
その結果──
ティラノサウルスは全力疾走ができなかった可能性が高い
という驚きの研究結果が次々と発表されています。
なぜ走れなかったのか?理由は“足にかかる負荷”
ティラノサウルスは全長12m、体重は8トン近い個体もいたとされます。
この巨体を支える脚には、走行時に莫大な力が加わります。
最新の生体力学モデルによれば──
- 走ると脚の骨に「耐えられないほどの衝撃」が加わる
- 走行中に骨折するリスクが高すぎる
- 筋力より“骨の強度”が速度の限界になる
つまり、ティラノサウルスは「筋肉が弱い」のではなく、
“骨が壊れるほど速く走れなかった”のです。
最新の推定速度は“時速20km前後”
複数の大学研究(英オランダ・マンチェスター大学など)によると、
ティラノサウルスの最高速度は──
時速17〜27km(平均20km程度)
というのがもっとも信頼性が高い推定値とされています。
これは、人間のジョギングと同じくらいの速度。
映画のように“車を追いかける怪物”ではなかったわけです。
ではティラノサウルスは弱かった?──答えはNO
ティラノサウルスが走れなかったとしても、それは弱点ではありません。
むしろ彼らは「走る必要がない捕食者」でした。
- 嗅覚が異常に発達し、獲物を遠方から感知できる
- 持久力が高く、歩行しながら長距離を移動できる
- 噛む力は史上最強で、一撃で獲物を倒せる
- 待ち伏せ型の“短距離ダッシュ”は可能だった
最高速度は遅くても、
“最強のハンターとして十分すぎる能力”を備えていました。
歩きながら獲物を追う“長距離ストーカー”だった?
最新の生態研究では、ティラノサウルスの狩りのスタイルは
「走るのではなく、歩きながら追い詰める」
という説が有力になっています。
大型獲物(ハドロサウルスなど)は長距離逃走が苦手で、
足の怪我も多かったため、
ゆっくり追い詰めていく戦術が非常に有効だったと考えられています。
映画とは違う“現実のT. rexのすごさ”
映画のティラノサウルスはスプリンターですが、
現実のT. rexは超高性能の重量ハンターでした。
- 骨が壊れないギリギリの速度で確実に動く
- 視覚・聴覚・嗅覚が非常に優れている
- 噛む力は1トンの車を粉砕できるレベル
- 持久力に優れ、獲物を逃がさない
走れないのではなく、
“走る必要がないくらい完成されたハンター”だったのです。
まとめ:ティラノサウルスの最高速度は「時速20km前後」
ティラノサウルスの最高速度は、最新研究の一致した結論として──
約20km/h程度(走行は困難)
というのが現在の有力説です。
しかしこれは弱さではなく、
環境や身体機構に最適化された“恐竜としての完成形”だったといえます。
T. rex を正しく理解すると、
「足が遅い=弱い」ではなく、
「ゆっくり歩いても負けないほど強い」
という“本当の姿”が見えてきます。