ペルトセファルス・マチューリン：更新世アマゾンで発見された巨大淡水カメの進化と生態

　ペルトセファルス・マチューリン (Peltocephalus maturin) は、ブラジルのアマゾン地域で発見された新種の巨大淡水カメです。この種は更新世後期（約4万年前から9千年前）に生息していたと考えられており、甲羅の長さは約1.8メートルに達し、これまでに知られている最大級の淡水カメの一つとして注目されています。

発見と命名

　この新種のカメは、ブラジルのポルトヴェリェにあるタカラス採石場で、金鉱夫が偶然に下顎の一部の化石を発見したことに端を発します。化石は、その後、チュービンゲン大学のガブリエル・S・フェレイラ博士が率いる国際研究チームによって分析され、2024年に正式に「ペルトセファルス・マチューリン」として記載されました。名前は、スティーブン・キングの小説『ダーク・タワー』シリーズに登場する聖なる大亀「マチューリン」に由来しています​。

特徴と進化的意義

　ペルトセファルス・マチューリンは、現生のアマゾン川の大頭カメ (Peltocephalus dumerilianus) に近縁であり、全長約1.8メートルに達する巨大な淡水カメです。このカメの下顎の形状は、非常に特徴的で、他のカメと区別される重要な特徴の一つです。特に、咬合面（トリチュレーティングサーフェス）に見られる構造が独特で、現生種や他の化石種とは異なる進化を遂げたことが示唆されています​。

生態と食性

　この巨大な淡水カメは、現生のオオアタマヨコクビガメと同様に雑食性であったと考えられています。顎の狭い切断面は、植物のみではなく、動物をも摂取していた可能性が高いとされています。これは、当時のアマゾン地域の生態系の多様性を反映しており、彼らがどのようにして巨大な体を維持していたのかという点で重要な手がかりを提供しています​。

絶滅と人類との関わり

　ペルトセファルス・マチューリンの絶滅については、いくつかの仮説が立てられています。その一つとして、更新世後期から完新世初期にかけての気候変動や、初期の人類による狩猟が要因であった可能性が指摘されています。アマゾン地域には、約1万2600年前にはすでに人類が住み着いており、他の大型動物と同様に、この巨大なカメも人類の食料として狩猟されていた可能性があります。しかし、ペルトセファルス・マチューリンと人類が実際に出会った証拠はまだ見つかっておらず、今後の調査が待たれます​。

この発見は、淡水カメの進化やアマゾン地域の生態系に関する理解を深める重要な一歩であり、今後の研究によってさらなる詳細が明らかにされることが期待されています。